講師 | イエテポリ大学歯学部歯周病科 教授 トード・ベルグルンド |
講演テーマ | 重篤な歯周組織破壊が起こる歯周病変と起こらない歯周病変との差異 |
■講演内容 | ||||||||||
重度歯周炎は、成人の約8-11%が罹患すると言われており、ごくありふれた疾患である。歯周炎の感受性や重症化については個体差があるが、その理由についてはいまだ解明されていない。歯肉炎は歯周炎の初期症状であると考えられているが、その一方で、必ずしも歯肉炎の病変がすべて歯周組織破壊を伴う歯周炎に進行するとは限らない。遺伝子解析を用いた研究により、歯周炎の感受性に関連するいくつかの候補遺伝子が発見されているが、これらは単に遺伝子スクリーニング法により同定されただけであり、実際の歯周炎の病変にすべて一致するものではないかもしれない。このように、歯周組織破壊のみられない歯肉炎と、歯周組織の破壊が進行した歯周炎に関しては、それらの違いについてさらなる解明が必要と思われる。 今回の講演では、長期にわたる歯肉炎および重度歯周炎のそれぞれの病変における細胞の構成と機能の差異について、イエテボリ大学歯学部歯周病科の最近の研究を報告する。組織学的な解析をもとに、その臨床的意義について考察したい。 |
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■略歴 | ||||||||||
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講師 | 大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座 予防歯科学分野教授 天野敦雄 |
講演テーマ | 歯周病因論から歯周治療を再考する |
■講演内容 | |||||||||
歯周病の病態は一様ではなく、治療方法や転帰も画ーではない。時に複雑怪奇な症状を見せるこの疾患に対して、我々が拠り所とすべきは、科学的病因論である。21世紀に入り歯周病の感染論研究は加速度的に進展した。今回は、新たな病因論から歯周治療を再考し、治療後の転帰に影響を与える因子を考察する。 歯周ポケット内縁上皮細胞が剥離脱落し潰瘍が形成されると、消瘍面に露出した毛細血管から歯周ポケット内に血液が供給される。これが、ポケットプロービング時の出血、あるいはブラッシング時の出血の原因である。血液を供給されたP.gingivalisなどの歯周病菌は、赤血球のヘモグロビンや血清タンパク質を栄養素として利用し、加速度的に増殖し病原性を高める。その結果、歯肉縁下バイオフィルムの病原性が著しく増強される(高病原性化)。歯周組織とバイオフィルム病原性の拮抗バランスが崩れた時、歯周病が発症する。バイオフィルム の高病原性が続く限り、宿主との長く厳しい戦いが歯周組織を舞台として開始されるのである。症例とともに、歯周病発症・進行のメカニズムを考察する。先生方の臨床経験に照らして「なるほど、思い当たる」と膝を叩いて頂けることを願っている。 |
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■略歴 | |||||||||
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講師 | 大阪歯科大学歯周病学講座 主任教授 梅田 誠 |
講演テーマ | 歯周治療の成否を左右する着目点と改善への手引き |
■講演内容 | ||||||||||||||
歯周病において長期に歯を健全な状態で維持することは重要です。また、歯周病と全身疾患との関係についても近年注目され、歯周組織に炎症が継続した状態は糖尿病や血管系の疾患に悪影響を及ぼすリスクがあります。通常の軽度から中等度の破壊を伴う歯周病に対しては、歯周基本治療を中心とした治療でほとんど改善します。歯周甚本治療後に歯周ポケットが数か所残存していても、歯周ポケットの活動性が収まっていればサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)によって歯周組織を問題なく維持することができます。しかしながら、中には進行を抑えることが難しいものもあり、治療がSPTまで達して歯周病の進行が収まったと判断したのに、急性症状を起こし破壊が進行してしまう場合もあります。歯周病の原因は、プラーク細菌、特に歯周病原細菌ですが、歯周組織破壊はこれだけでなく、歯周病原細菌に対する抵抗性における個人差や、外傷性咬合や、解剖学的なリスク因子など様々な要素が絡み合って進行します。また、歯周ポケット内から細菌プラークを取り除いても、病的歯周組織において病巣を形成し、全身に悪影響を及ぼす可能性もあります。 多くの開業医の先生方にとって、多くの患者さんが歯周病にかかっており、ほとんどの場合、口腔清掃指導、スケーリング・ルートプレーニングを中心とした歯周基本治療と、部分的なフラップ手術で対応されていると思います。しかし、予後不良な経過をたどる患者さんもいらっしゃると思います。このような場合、従来の機械的なプラークコントロールに加え抗菌療法などを併用することが必要です。また、難治性と考えられる歯周病であっても、積極的な歯周治療によって長期にわたって良好な経過をたどる場合もあります。歯周治療の成否は、それぞれの患者さんごとに、歯周破壊進行のカギになる要素とそれを解決する戦略にあると思います。今回、歯周治療の成否に関して、歯周病の重症例や良好な経過をたどらなかった症例も含め、どこが歯周病改善のポイントであったのか考察していきます。 |
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■略歴 | ||||||||||||||
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講師 | 日本歯科医学会会長 住友 雅人 |
講演テーマ | 本シンポジウムの意義を考える |
■略歴 | ||||||||||||||||||||
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講師 | イエテポリ大学歯学部歯周病科 教授 トード・ベルグルンド |
■講演内容 |
インプラント周囲炎とは、歯槽骨吸収をともなうインプラント周囲の炎症性疾患であり、プロービングによる出血・排膿を伴うものとされる。近年の調査では、インプラントを行った患者の約15%がインプラント周囲炎に罹患していると報告されているが、その罹患率については、どのような症例をインプラント周囲炎とするのかによって変わってくるであろう。重度歯周炎の既往がある患者は、インプラント周囲炎に罹患するリスクが高くなる。講演では、インプラント周囲炎と歯周炎の重要な相違点についての研究結果を報告する。両者を比較することにより、インプラント周囲炎の発症と進行を解明することができる。さらに、インプラントの表面性状とインプラント周囲炎の関係についても、前臨床試験の結果を交えて言及する。 インプラント周囲炎の治療において重要なことは、患者自身のセルフケアと歯科医師による感染のコントロールを上手に組み合わせることである。講演では、インプラント周囲炎の外科的治療方法を解説し、その治療結果を報告する。さらに抗生剤の投与やインプラントの表面性状など、外科的治療の術後成績に影響を及ぼす因子についても、前臨床実験やランダム化比較試験の結果を示して考察する。 |
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